2013年4月10日水曜日

治験と利権

今日はちょっとビックリするようなことを知りました。
日本で医師をしていたのはもうかれこれ15年以上も前のこと、しかも私は医局というものに如何なる形でも属したことがありません。ですから、日本の医師免許保持者としてはかなり変わった経歴の持ち主ということになるでしょうか。当然の如く、日本の医局、学会のことなどほぼ何も知らないと言い切っても差し支えのないレベルの人間です。
さて、今日ある先生に依頼されていたバイラスインフェクションを行って作っていた幾つかの細胞株を手渡した後に、ふとしたことから立ち話になって乳腺外科(一般的には乳癌の治療に当たる外科と考えて頂いて差し支えないと思います)における治験(患者さんに対して認可されたプロトコールに沿って行われる薬剤の投与とその効果、影響などを評価する治療過程、まあ、平たく言えば患者さんを使った薬物の効果確認実験です。)において、製薬会社が抗癌剤の治験依頼をして来た時に患者さん一人あたりに支払う金額のことを聞きました。
乳癌の抗癌剤治療というのは長期にわたって何クールも行うことの多い非常に辛い治療になることも多く、患者さんご自身の精神的、肉体的な負担も大変なことが多いのです。中には比較的副作用を見せない方もいるにはいるのですが、僕の周囲でも、体毛の全脱落や皮膚の紅斑、浮腫、発熱、耐え難い疲労感やそれに伴うデプレッション、易感染性の増加など書くのにスペースがないほどの症状を一人で背負われる方もいるのです。
私にとっても、乳癌における抗癌作用の有る製剤の投与において、副作用が低い、もしくは殆ど無いものが開発されることは患者さんにとってもその配偶者、子供さん、御家族の誰にとっても素晴らしい福音だと当然のように思うのですが、こういった開発の裏では治験によって製薬会社から医局に支払われる金額が患者さん一人あたり200万円前後になるというのです。
私は俄にはその金額の多さを信じることができませんでしたが、次に思ったのは例えそれが本当だとしてもそのお金は一体どこにどう消えていくのだろうか、適正に使われているのだろうかということを考えたのでした。よくよく考えてみると、こういったお金というのは結局は製剤の開発費としての支出に反映しますよね、、、。でも、その開発費を最終的に会社が取り戻すためにはその薬が売れないとならない訳です。では、その薬が売れたとしてそのお金が払われる窓口はどこかというと、、、国家の維持する健康保険からということになるのでしょうから、結局はその源泉の殆どは国民自身の払った税金が原資ということになります。
病を得た方を互助で助けるのは当然、こういった保険の理念の原始的根源ですが、その負担を水膨れさせる患者には知らされない金銭授受のシステムが存在するというのは良識的に有ってよろしいことなんでしょうか?
治験には当然の如く患者さんの同意書が必要なわけですが、果たしてそういった事実は患者さん側にも知らされているのか、そしてお金はどこに行っているのか、、、。極めて素朴な疑問を抱いたのでした。
まあ、日本の日々の臨床実務をされている先生方からみれば、「何を今更、アホか?」と言うことなのかもしれませんが、、、。
答えを知りたいなと正直思った今日の午後でした。
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